「淨るりシアター」は江戸時代後期から能勢町で受け継がれてきた浄瑠璃文化を守り、さらに発展させるために1993年(平成5)にオープンした施設です。
505席の劇場と会議室等からなる「淨るりシアター」は、地域住民による浄瑠璃公演、ピアノコンサート、民謡大会などに加え、アーティストのコンサートなども開催され、能勢町の文化・芸術活動の拠点にもなっています。
能勢町と浄瑠璃の関わりは古く、今から200年以上前の江戸時代後期、村人であった杉村 量輔が、大阪市内で竹本弥太夫に弟子入りし、能勢に「義太夫節」を持ち帰ってきたことにはじまります。
能勢の浄瑠璃は、人形を持たず、太夫(語り手)と三味線によって物語が進行する「素浄瑠璃」と呼ばれるもので、町内各地では農業のかたわら、たびたび浄瑠璃会が開かれるようになり、土地固有の芸事としてその歴史が育まれてきました。
現在能勢町には「竹本文太夫派」「竹本井筒太夫派」「竹本中美太夫派」「竹本東寿太夫派」の四派があり、それぞれに太夫が属しています。各派のトップは「おやじ」と呼ばれ、弟子を4〜5人養成していくことで後継者の育成を行う独自の家元制が現在も続いています。いわゆる世襲制でない「おやじ制度」は他に例がなく、能勢の浄瑠璃は1999年(平成11)に国の無形民俗文化財に選択されました。
淨るりシアターには、能勢の浄瑠璃の歴史やルーツのほか、「見台」「三味線」「床本」「衣装」など実際に古くから使用されていた様々な道具を展示しています。
「見台」とは、台本を読んだり見たりするために用いる台のことで、浄瑠璃では「ことば」「うた」「せりふ」を担当する太夫の前に置かれます。太夫によって家紋が入るなど個性を出すことのできる道具です。
「床本」とは、太夫が使用する浄瑠璃の詞章を筆で書き写したもので、詞章のほか声の抑揚や息継ぎ点、発声上の技巧などを示す心覚えの印しが書き込まれています。歌舞伎の「勘亭流」に似た大きく特徴のある文字で書きあげます。
ロビーの壁に掲げられているのは、多くの「まねき」。淨るりシアターの文化創造活動に対し、ご支援くださった個人や団体の名前が刷られています。
「淨るりシアター」の開館をきっかけに、従来の素浄瑠璃に加え、人形浄瑠璃の取り組みもはじまります。
文楽の演者に人形の操り方の指導を受けながら、能勢独自の素浄瑠璃に人形・囃子を加えた「ザ・能勢人形浄瑠璃」が1998年(平成10)にデビュー。
2006年(平成18)10月には、新たに名称を「能勢人形浄瑠璃 鹿角座として劇団を旗揚げし、定期公演のほか大阪府や民間事業者からの依頼公演などにより、全国各地で活動の場を広げてきました。
毎年6月には「能勢淨るり月間」と題して、能勢オリジナル演目からお馴染みの古典演目まで、現代的な趣向をこらした幅広いジャンルの公演を行っています。
浄瑠璃の人形は三人(主遣い・左遣い・足遣い)で操っており、息を合わせることで自然な動きを表現。人形の着物は現代風にアレンジされ、小道具の一部は座員自ら手作りし色々工夫しています。
2014年(平成26)、能勢人形 浄瑠璃 鹿角座をはじめとする能勢の浄瑠璃文化をさらに多くの方へ知っていただくため、デザイン公募、人気投票を経て、能勢町公認キャラクターとなったのが「お浄」と「るりりん」。
クールな「お浄」こと西能 浄と、天真爛漫な「るりりん」こと木勢 るりは、16歳の高校1年生。それぞれ太夫、三味線として鹿角座に所属しており、なんと鹿角座の公演に出演することもあるそう!
お浄、るりりんの誕生月(6月、10月)には「お浄&るりりんフェア」限定グッズを販売したり、ふるさと納税でしか手に入らないお礼品や、能勢電鉄の特製ヘッドマークと中吊りポスターで電車ジャックするなど、能勢の観光大使としても大活躍。
今では全国からファンが訪れるほどの人気キャラクターとなっています。
伝統継承だけでなく、様々な取り組みによって新たな発展を目指している「能勢の浄瑠璃」の今後も注目です!
淨るりシアター | |
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住所 | 〒563-0341 大阪府豊能郡能勢町宿野30番地 |
TEL | 072-734-3241 |
休業日 | 毎週火曜日(祝日の場合は翌々日の木曜日) 年末年始(12/29~1/3) |
公式サイト | http://www.jyoruri.jp/ |