1967年に「東洋一」の大規模野外施設として全国に先駆けて開所された、大阪府立総合青少年野外活動センター。かつては林間学校やボーイスカウトなど自然活動体験の場として長く愛されてきましたが、2011年3月多くの方に惜しまれつつ閉所。その後、しばらくの間、立ち入りが制限された期間が続きました。有名な建築家が設計した建築群も老朽化が進み、人の入らなくなった森は驚くべきスピードで人を寄せ付けないような深い森に変化していきます。この豊かな自然環境を活かしていけるのだろうか…。
様々な声が聞こえてくる中で、諦めることなく再生に向けた取り組みが進んでいました。
閉所から10年余り。いまこの場所はどうなったのでしょうか。
そこには若いカップルやグループの歓声がありました。静かにソロキャンプを愉しむ男性もいました。家族で笑い合いながら、真剣にアスレチックに取り組むファミリー。元気なアクティブシニアの団体の方々も。幅広い層に人気の一大レジャーランドに生まれ変わっていたのです。
運営部の森知美(もり・さとみ)さんにお話しを伺いました。
―敷地内に入ってすぐ、湖畔にテントを張って焚火している男性の利用者がいて、とてもカッコよく絵になっていました。
「そうでしたか、ありがとうございます(笑)。昨年の夏から、やっと念願のキャンプサイトがオープンできたんですよ。区画割りをせず、こちらで用意した輪っか状の縄を広げた範囲内であれば、基本どこにテントを設営しても構わないという条件でスタートしました。まだTwitterやyoutubeだけでしか告知はしていないのですが、おかげさまで予約も埋まりつつあり、順調な滑り出しです。」
―こちらを運営している(株)冒険の森とはどのような会社なのですか?
「冒険の森は『森の楽しさを価値に変える』を企業理念に、全国の放置された森林や管理の行き届かなくなった公園を利用して、アドベンチャーパークを整備する事業を展開しています。できるだけ自然環境を作り変えてしまわないように自然を活かした遊具を自社で設置、運営管理しております。現在、北は岐阜から南は福岡まで、全国で直営9か所、フランチャイズ3か所の施設があります。」
―アドベンチャーパークということですが、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか?
「はい。能勢であれば、一番の目玉は全長536mのロングジップライン『てっぺん』ですね。木と木の間をかわすように張られたワイヤーロープと連結したハーネスだけを頼りに、山の高い位置から下手に向けて重力に従って滑走します。途中、湖の上を横切るなど、スリル満点で、その爽快感は日常の中では、まず味わえない体験だと自負しています。」
―この広大な自然を、最低限の間伐とワイヤーを張ることでアトラクションに変えてしまうのはすごい発想だと思います。
「森の中に張られたワイヤーを滑車で滑り降りる、この遊びはヨーロッパが発祥なんです。それを日本に先行導入して事業化している会社がありました。最初はその会社と提携して、技術やノウハウを学びました。今は社内の専門スタッフが、現地に飛んでワイヤーを張ったり、体験プログラムを設計するようなこともしています。」
―もともと日本に存在しなかったレジャー。専門スタッフの養成は難しいのではないでしょうか?
「林業では、伐採した木を運び出すために『林業架線』という技術があります。その林業架線を設置する日本の伝統的な技術を、アトラクションの設置に活かすというのが冒険の森の考え方です。
木を運ぶのか人を運ぶのかという違いはありますが、厳しい安全基準に従ってアトラクションは作られているので、安心して楽しんでほしいです。」
―ジップライン以外にはどのようなものがあるのでしょう。
「地上15メートルの高さの木の上で体験する『ツリートップアドベンチャー』は、木と木の間をハーネスを頼りに、飛んだり跳ねたりしながら自分の力だけで進んでいくアスレチックです。日常で体験できない高さなので怖さで足がすくむ方もおられますが、基本的には自力で最後まで完走していただきます。
もちろん事前に入念な安全講習を受けていただきます。「自分の命は自分で守る」そんな気持ちでチャレンジしていただきたいですね。
高い所に登れない小さなお子様には、地上に設置されたネットトンネルや丸太渡りなどハーネスなしで楽しめる『ツリーシェイドアドベンチャー』もご用意しています。他には重心を前後に移動させながら移動する新感覚の乗り物セグウェイの体験ツアーなどのプログラムもあります。」
―様々なメニューが目白押しのボウケンノモリですが、ほかに新しい取り組みなどはありますか?
「はい。BOUKEN Lab.という教育事業をスタートさせています。
コースは一人ずつ順番にスタートするので最初にスタートする人から最後にスタートする人までには、100分程度の時間差が生まれて長い待ち時間ができてしまいます。出来るだけ待ち時間が生じないようにプログラムの流れを調整しつつ、避けられない待ち時間を有効に活用する方法を考える必要がありました。
そこで『チームビルディング』『カンケイづくり』の教育的内容を盛り込んだ『アドベンチャープログラム』を開発しました。専門のファシリテーターの指導のもと、課題のあるゲームに取り組んでもらいます。時間内に課題をクリアするために、チームで話し合ったり、コミュニケーションを高め合うことで自然と『チームビルディング』の基礎が学べます。お子さんだけでなく、企業の新人社員研修にも使われているんですよ。
BOUKEN Lab.では『アドベンチャーフィットネス』という取り組みも行っています。こちらは健康寿命を伸ばしましょう、というテーマで森の中で楽しく体を動かしてもらうプログラムです。健康運動指導士や臨床心理士の監修の下で、病気になりにくい体づくり(未病)のアドバイスも受けることができます。」
―ボウケンノモリの自然を活かした体験プログラムの充実ぶりに驚きました。あえてお聞きしますが、自然の中で行うプログラムが多い特性ゆえに、雨天や降雪など、天候に左右されることはないのでしょうか?
「実はものすごく影響します(笑)。雨が続くと、来場者は激減します。いろいろ対策を考えてはいるのですが、根本的な解決策はまだ出てきてないですね。冬も一度雪が降ると何日も融けないぐらい、標高が高い場所なんです。冬用タイヤに付け替えてない都市圏からの利用者の安全も考えて、数日クローズにすることもあります。
時間ができたら、スタッフは森林環境整備に回ります。コースメンテナンス、備品チェック、看板づくり、薪づくり、掃除など、やることはいくらでもあります(笑)。冬は来シーズンに向けて、社長を交えて作戦会議をすることもありますね。そう、あの暖炉に薪をくべて炎を眺めながら。来年の春までに、ああしたいね、こうしたいねとか。
実は、わたし(森さん)は能勢が地元で、「野外活動センター」があった頃、ここでキャンプカウンセラーをしていたんですよ。」
―ええーっ!そうなんですか!それを先に言ってください(笑)。「野外活動センター」の頃も、ここでスタッフをされていたんですね?
「大学生のときだから、何年前かなあ。あの頃から月日が流れましたが、いまも当時と同じ管理棟で、薪の炎を眺めながら、アイデアを出し合っていることが本当にうれしいんです。
お客様から『いいところですね!』などと、お声がけいただいたとき、豊かな能勢の自然が誇らしく思うこともあり、日々喜びを感じながら仕事をさせていただいています。」
ボウケンノモリ のせ | |
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住所 | 〒563-0341 大阪府豊能郡能勢町宿野437-1 |
TEL | 090-4643-4010 |
休業日 | 公式サイトのカレンダーをご確認ください |
公式サイト | https://bouken.co.jp/ |