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「 能勢町観光ガイドの会・川合さんが語る、能勢の歴史と自然の魅力 」

能勢町観光ガイドの会・川合さんが語る、能勢の歴史と自然の魅力

能勢町の魅力を18年にわたって伝えてくださった観光ガイドの会

こんもりと盛り上がった白い夏雲が空を覆い尽くしていた八月某日。
新型コロナは収まる気配がなく「夏でもマスク」は、もはや日常的な風景となってきました。
大阪最北端の能勢町、どんなに人口密度が少なくとも、鹿や猪の方が多い田舎と言われても、暮らしにマスクは欠かすことができません。この日も熱中症にならないように、こっそり鼻だけ出して息をしていたところに、川合さんは颯爽とした足取りで現れました。

現在「能勢町観光ボランティアガイドの会」会長をされている川合 悦子さん。
町内の小中学校で長年教鞭を執られ、能勢町のなかで最も標高の高い位置にある、天王小学校を最後に退職されたそうです。いまから18年前ということで、聞かなくともおおよそ想像できるのですが、「先生、とてもお若い」。はじめてお会いした率直な感想です。

川合さんは過去にホノルルマラソン、10kmウォークに参加されたこともあったそうです。
そう言われてみれば、とにかく姿勢が良くて、声にも張りがある。
実際にお会いして「能勢町の案内役はこの方を置いて他にいない」という気持ちになってきます。

教職を退かれた後、観光ボランティアガイドになるまでの経緯を川合さんにお聞きしました。

教師を定年退職してから同僚と立ち上げた

「岐尼小学校で教師をしていたとき、恩師のような同僚だった田和 好(たわ・よしむ)先生と能勢の歴史について勉強をしていたんです。その活動をしながら、いつか能勢を紹介したいね!と夢を語りあっていたんですよ。
平成16年、能勢町役場の観光担当の企画で『能勢町の魅力を紹介する人材育成が必要』ということで、観光ガイドを育てよう、という話になったんです。

『観光ボランティアガイド養成講座』を開催すると、20〜30人の応募があって。能勢町役場が建て変わる前の古いプレハブ庁舎の3階を会場にして講座をスタートしました。

それがすべてのはじまりでした。

先輩だった田和先生は大阪府の文化財保護委員をされたり、能勢町史の執筆にも関わっておられるほどで、講師として適任でした。ほかには地元の歴史に精通されていた郷土史家の川上 悦司(かわかみ・えつじ)さんにも講師をお願いしました」

鰐口について手書きの資料をもとに説明する川合さん

当時の能勢には郷土をこよなく愛し、それを観光客に伝えたいという熱心な方々がたくさんおられたのですね。能勢の観光ガイドになるために30人もの受講生が、役場の2階で熱心に講義を受けていたとは…。

そのような熱い想いを持った方は、今の能勢にも多数おられると思いますが、当時の川合さんや講師の方々を突き動かしていた原動力は何なのでしょうか。

「一言でいうと、もったいない!ですね。能勢のガイド養成講座をやって修了証書まで発行した。実践をしないと、もったいない。だから田和先生、受講生の仲間と一緒に観光ガイドの会を作ったのです」

町内の自然歩道をくまなく歩いて、数冊の資料にまとめあげた

「観光ガイドの会」は能勢町観光協会会員となり、能勢町から観光に関する業務を正式に委託されることになったのです。

「平成12年(2000年)、能勢に道の駅(観光物産センター)ができ、平成17年『観光ガイドの会』発足と同時に観光物産センター内に観光案内所が作られたのよね。そのタイミングで観光ガイドの会は観光案内所の業務を請け負い、能勢町の魅力を発信する場になりました」

能勢町内をくまなく歩いて調査し編纂した資料たち

川合さんが教師を退職されてから18年、道の駅(観光物産センター)の発展と共に、観光ガイドの会も歩調を合わせて進化してきました。具体的にどんな活動をされているのでしょうか。

「まず最初に、資料作りに着手。町内の自然、歴史、文化すべてを調べ、ファイルにしました。町内を8ブロックに区切り、各ブロックをめぐりやすいコースにして、説明しやすいように。

また、能勢町内の自然歩道をくまなく歩いて、ハイキングコースとして、こちらもファイルにまとめました。妙見山コース、行者山・剣尾山コース、天王深山コース、倉垣・小和田山コース、名月・猪子峠コース…全部で10以上のコースの見どころを細かく調べて、書き記していったのよ」

先生が棚から取り出した赤いファイルは、歴代のガイドの方が何度も何度も読みこんで、頭にたたき込んだ、まさに血と汗の結晶です。

「日々活用の源になっているもので、ガイドの原本になっています。保管場所としては、今のところ活用しやすいここ(道の駅内観光案内所)がベター」

 

安易に車で町内を巡るだけではない、じっくりと大地を踏み締めて歩くためのマップ

そのほかに先生が見せてくださったのは「能勢ええとこマップ」というガイドマップ。能勢町教育委員会と観光ガイドの会が10年ほど前に制作したものです。(1)天王コース(2)山辺コース(3)岐尼コース(4)三草山・長谷コース(5)久佐々コース(6)田尻コース(7)野間コース(8)歌垣コース、この8コースが史跡伝統文化コースで、ほかにも自然歩道コースとして、季節を感じながら景色を楽しむ11コースが設定されています。

先生から「どうぞお持ちください」と貴重なパンフレット(現在は廃盤)をいただき、じっくりと拝見しました。観光ガイドが勉強するための虎の巻(赤いファイル)が元ネタになっているので、本当にマニアック。能勢に詳しい方でも、知らない知識に驚くのではないでしょうか。

一例をあげますと(3)岐尼コースの見どころは、A:狐塚古墳 B:御門跡 C:東光山永看院となっています。能勢のことは何でも知っていると、自惚れていた筆者も、全てしらない場所でした。

地図にプロットされた場所を見て愕然としました。

「ここは車で行くことは不可能、山の中を歩かないと辿り着けない…」

しかし、このガイドマップは何も間違っていません。
ハイキングコースだから、山の中にあるのが当然なのです。

現代の便利さの上に暮らす私たちは「車」という乗り物を前提に生きている、ということを図らずも実感してしまいました。

能勢の若い人に、将来この町を案内するガイドになってもらえるように

最後に、川合さんに観光ガイドの会・会長として、これからの夢を語っていただきました。

「いまガイドの会のメンバーは12人で、実働9人くらいです。みんな高齢になってきていますが、元気に頑張っています。座学だけでなく現地に足を運んで、実際に歩いて勉強していますよ」

でも先生、後継者を育てないといけないのではないでしょうか…。

「そうね、わたしも能勢分校で授業をすることがあります。能勢町の観光についてという内容です。能勢校の若い子ども達が将来、後継者になってくれるといいわね」

「自然と歴史はいくら勉強しても損はしないのです。見ること、感じること、聞くこと。そう、私になんでも聞いて欲しい。見る、感じる、聞く。そして、知る。知ると能勢が好きになる。きっとそれが大人になったとき自己肯定感につながってくると思うのよね」

 

※写真撮影時のみ、マスクを外していただきました。

 

能勢町観光ガイドの会・川合さんが語る、能勢の歴史と自然の魅力

川合 悦子さん
(かわい・えつこ) 

大学卒業後、この能勢で教職について、ずっと能勢町内の小・中学校で教鞭を執り、平成16年に退職。同時に養成講座を経て「ガイドの会」を結成する。会のメンバーの変動はあるものの、結成当時の仲間と共に、能勢の魅力を伝え続けている。 能勢の草木、吹く風、香り匂う、澄み切った空気、そして200年もの長きにわたり伝えられてきた浄るり、人形浄るり等。何をとっても知ってもらいたい、絵になる風景です。 私(達)の自慢の場所です。

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「のせむすび」は、能勢町で生活する人々の暮らし方や仕事ぶりなどを取材し、大阪のてっぺんから様々な情報を伝えるメディアです。
今まで知らなかった能勢の人やモノに出会い、新しい価値が広がり、この地に幸せな循環が生まれますように。

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能勢町は大阪府の最北端(てっぺん)に位置する人口9500人の町です。美しい棚田や樹齢千年以上の大ケヤキ、浄瑠璃やだんじりなど、先人から受け継いできた自然環境や伝統文化が残っています。
大阪・京都・神戸から1時間程で行ける、都会から一番近い里山です。

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