さとふる能勢町へ

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「 自分の思うままに『自由に』配置して自然のサイクルをつくる。能勢町宿野アクアリウムショップAqua Art LIBER 」

自分の思うままに『自由に』配置して自然のサイクルをつくる。能勢町宿野アクアリウムショップAqua Art LIBER

峠道に突然現れたメダカのお店

能勢に大坂峠という峠道があります。
名月峠とは少し趣が異なっていて、森の中を風のように抜けていく爽快感のある、素晴らしい峠道です。
その峠道を下り切ったところに、一際目立つ「メダカ」のノボリ旗がはためくお店が出来ていました。

「こんな山奥になぜメダカ・・・?」
「素人が軽々しく入って大丈夫かな・・・?」

様々なことを頭に思い浮かべながら、お店のドアをおそるおそる開けると、、、

生成りのシャツをさらりと着こなした上品な男性がにこやかに出迎えてくださいました。
優しい笑顔の持ち主はアクアリウムショップAqua Art LIBERオーナーの藤田 雅也(ふじた・まさや)さん。

まずは、気になっていたことを単刀直入にぶつけてみました。
なぜ、ここにお店を?

「以前、兵庫県川西市平野で熱帯魚などを扱うショップを経営していたのですが、コロナの影響で輸入がストップしまして。商品が流通しなくなったので、いったん閉めて、こちらに戻ってきたんですよ。

能勢町宿野は、私の地元なんです。実家の敷地内を改装して店舗にしました」

店内は外観からイメージできないほど、洗練されていて、おしゃれ。
ウッディな雰囲気がある空間に美しく商品が配置されています。
なんだか水槽の魚を眺めているだけで心が落ち着きますね・・・。

会社員時代の趣味が高じてショップを開業

こちらのショップを開業するに至る経緯はどのようなものだったのでしょう?

「もともと製薬会社で技術者として働いていました。その頃、趣味で『レッドビーシュリンプ』のブリード(交配)をやっていたんです。

淡水に住む赤白のシマ模様のエビなんですが、増やすことがとても難しいのです。
希少価値の高いものになれば、10万円も超えるもの(種親)もあるくらいで。
それが、たまたま養殖に成功したので、ハマってしまった(笑)。

3年くらい試行錯誤を重ね、増えたエビを専門業者に卸したりしているうちに、開業につながる流れが出来ました」

紅白の縞模様がとても綺麗なレッドビーシュリンプ。この模様も交配によって作り出されたものだという。

エビの養殖で手応えをつかんだ藤田さんは2015年にお店をオープン。
最初はエビと水草オンリーのお店としてスタートされたそうです。

エビと水草オンリーとは、かなりマニアックなお店ですね。
失礼ながら、お客さんが来られるのか心配になりますが・・・。

「開業当初は厳しかったですね。さすがにマニアック過ぎました(笑)
ネオンテトラやグッピーなどの一般的な熱帯魚を扱うようにすると、徐々に軌道に乗っていきました」

リビングに観葉植物を飾るように、好きに楽しんでほしい

なかなか初心者には取っ付きにくい世界に思えますが、どこから入れば良いのでしょう?

「まずは自分の好きな魚をひとつ決めてほしいです。
その次に、その魚に合う水槽を選びます。

さらに循環を生み出すために土や微生物や水草などを合わせていきます。
水草をきれいに成長させるには光合成が必要ですから、ライトとCO2ボンベも必要になってきます。

あとは水の濾過システムですね。そのようにして最低限必要な環境を揃えたら、あとは好きなように楽しんでもらって構わないです。

魚だけをよく見たいというのであれば、石とかだけおいてシンプルにしてもいいし、逆に水草を密林のようにモジャモジャにしてもいい。

リビングに観葉植物の代わりに置いたとき、どんなイメージになるかを想像してデザインしてもらってもいいと思います」

自然のサイクルに美しさを感じる

なるほど。意外に自由な世界なんですね!
熱帯魚を飼うことの一番の魅力って何なのでしょう?

「生き物を飼うことによって『命』について考える機会になると思います。
人間よりも短期間のライフサイクルなので、生死について様々な気づきがあるはず。

ショップ開業時から扱っているものに『ネイチャーアクアリウム』というものがあります。
水槽の中に水草や流木などを用いて景観を楽しむものですが、自然の生態系の仕組みを再現したものなんです。

私はこのような自然のサイクルが好きなんです。循環する自然の美しさを、一人でも多くの方に知って欲しい。でも、なかなか伝わらない(笑)」

能勢に戻ってきたことで何か地域との関わりは生まれましたか?

「地元の小中学生が通う『能勢町立能勢ささゆり学園』の先生が地元の先輩で、頼まれて学校に魚を入れた水槽を持っていったことがあります。
子ども達が自分で管理できるように、世話の仕方を教えたりする、出前授業的なことを一時期やっていました。当時の子ども達は卒業してしまったので、次の代があとを継いでやってくれているんじゃないかな」

正解がない自由な世界を自らの手で創造する

ワークショップなどもされているんですか?

「はい。カルチャースクールみたいな所で、講師をしたこともあります。

小さなアクアリウムを自分でつくってみよう、という感じで屋外でワークショップをやっていましたね。コロナ禍以前は、小学生から年配の方まで幅広い層の参加がありました。

こういう世界は庭師と一緒で三角構図とか、厳密には美しさの基準となる比率があるのですが、実際自分が見て良いと思うのが一番いいんです。

だから生徒さんにはいつもこう伝えてます。

『自分がいいと思ったところに配置してください。正解はないです!!

日本人はどうしても正解を求めてしまいがちです。
正解がないことで、いろいろ悩む方も中にはおられますが、最後は皆さん、納得して笑顔で帰っていかれますね。

お店の名前にもしている『LIBER(リベル)』には『自由』という意味があります。誰の評価も気にせずに、自分で良いと思ったものを創っていく、そんな『自由』を大切にしています。」

プレゼントに最適な苔リウム

店内に魚のいない、水すら入っていない水槽に、湿地性の植物が植栽されている商品が並んであるコーナーがあり、ずっと気になっていました。
藤田さん、これは…?

「これは『苔リウム』というものです。可愛いでしょう」

確かに、牧場の草に見立てた苔に、牛のミニチュアが配置されている小品など、見た目もかわいくて値段もリーズナブル。

これ、すごく良いですね!いきなりアクアリウムを始める前に入門編にぴったりなのでは?

「そうですね。ここから始めて、好きになったら、いろいろ手を広げてもらうのも良いかもしれません」

自分で植栽して良いのが出来たら、誰かにあげたくなりますね。

「そう、プレゼントに最適なんですよ。誕生日とか開店祝いの贈り物に。コンパクトだし、管理も楽なので、長く楽しんでいただけると思います」

いやー、それにしても、本当に奥が深い世界です。
ネイチャーアクアリウムから、苔リウムまで。今日だけで知らない世界をいくつ知れたでしょうか…。

藤田さんのお話は内容が深くて、しかも語り口柔らかく、すっかり魅きこまれてしまいました。
みなさんもぜひ、お店に足を運んで、いろいろ質問してみてください!


自分の思うままに『自由に』配置して自然のサイクルをつくる。能勢町宿野アクアリウムショップAqua Art LIBER
アクアリウムショップ Aqua Art LIBER
住所大阪府豊能郡能勢町宿野636
TEL 070-2310-3293
休業 月曜日、木曜日
site https://aquaartliber.shopinfo.jp/
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「のせむすび」は、能勢町で生活する人々の暮らし方や仕事ぶりなどを取材し、大阪のてっぺんから様々な情報を伝えるメディアです。
今まで知らなかった能勢の人やモノに出会い、新しい価値が広がり、この地に幸せな循環が生まれますように。

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能勢町は大阪府の最北端(てっぺん)に位置する人口9500人の町です。美しい棚田や樹齢千年以上の大ケヤキ、浄瑠璃やだんじりなど、先人から受け継いできた自然環境や伝統文化が残っています。
大阪・京都・神戸から1時間程で行ける、都会から一番近い里山です。

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