さとふる能勢町へ

のせむすび

「 旧天王小学校と辻先生 」

旧天王小学校と辻先生

2015年3月に140年の歴史を閉じた大阪最北端の学校

標高791メートルの深山のふもとの山あいにこじんまりと佇む小さな集落、能勢町天王。かつてこの地域の児童が通っていた大阪最北端の小学校はブルーの屋根と六角形の窓の体育館が印象的です。文部科学省が定めた大阪で唯一の『へき地1級指定校』になっていました。

2015年に閉校となりましたが、全校生徒は4名でした。現在この地域の子どもたちは山を下ったところに出来た「能勢ささゆり学園」にスクールバスで通学しています。

ここには小学校に併設する形で天王中学校がありました。小学校よりも早く1989年に統合されたのですが、少人数を活かした意欲的な取り組みが熱心に行われていたそうです。中学校があった当時、指導にあたられていた辻信義先生にお話を伺いました。

旧天王小中学校校舎
廃校となった校舎。耐震補強ができていないということで原則として使用禁止になっている。
辻先生

地域に学校を残すために2年間奮闘したが、叶わなかった。

「天王中学校が統合されるという話が持ち上がって、そんなことは絶対させない、と最後の二年間はとにかく必死でしたね。毎晩遅くまで地元の人と話し合ったり、この学校が積み上げてきた実績を資料にまとめたりして、なんとか学校を地域に残せないかという思いでした」

「でも結局その願いは叶わなかったんだけども。校舎を背にして橋を渡ったとき、こみ上げてくるものがあったね。もうここに来ることはないのか…なんてね」

能勢町内の別地域に暮らしていた辻先生は、天王への愛着が断ち難く、学校の近くに土地を買って家を建て、天王に家族で引っ越してこられたそうです。

木造校舎
戦後、町内に先駆けて建てられた木造校舎。その取り壊し前に、中学生が卒業製作として作った作品。

郷土学習指導集先生が手に持っているのは天王の郷土学習指導集。子ども、教師、地域の人が一緒に学びあうことをテーマに、小・中学校の先生と子どもたちが一丸となって、丹念に地域に聞き取り調査をして膨大なデータをまとめたものです。

一冊一冊手作りで製本した資料集。円グラフなどの図表もフリーハンドで描かれており、パソコンに使い慣れた現代の感覚からすると、費やされた労力と情熱に感服するばかり。

郷土学習指導集

感謝の気持ちが深い天王村の人々

子どもたちと地域を回って調査し、周辺の地理と歴史を学んできた辻先生に、天王の魅力を聞いてみました。

「丹波と大阪の境界にある天王村は古くから交通の要衝として、規模は小さいながらも暮らしの営みが、ちゃんとあったんですよ。
ただ農業をするには気候風土が厳しすぎて、お米もあまり穫れなかった」

「年貢の徴収を減免してもらうために、天王の村人は代官様に陳情に行った。何度も却下されたけど、長谷川六兵衛という代官は村人の願いを聞き入れて7年間、減免を行った。また木村宗右衛門という代官は水害によって1年間減免をしてくれた」

「天王神社には2人のお代官さまが、神様と一緒に祀られてあるんですよ。天王村の人々の感謝の気持ちの深さですね」

立体模型地図
「へき地教育は教育の原点、と言われるくらいでねえ、少人数だからこそ得られる豊かさや深さがあるわけ。これ、見てください」

窓越しに先生が指差したのは、1986年当時の中学三年生が作った立体模型地図。薄板を等高線にしたがって糸鋸で切り、それを山の形になるように何枚も積み重ね、最後によりリアルになるようにグラデーションで色が重ねられています。とても中学生が作ったとは思えない出来栄えですが…。

「当時はいろんなことやりました。山を持っている地元の方から間伐材を分けてもらって、ベンチを作ったりとかね。2人の生徒と一緒に、ちゃんとホゾで組む、本格的な木工に取り組みました。あの頃は楽しかったなあ…」

旧天王小学校と辻先生

辻 信義さん
(つじ・のぶよし) 

長野県生まれ。父の転勤で全国を転々とし、大阪で中学校教師となる。担当教科は国語で、現在は能勢中学校の支援学級担任。辻さんが思う天王の魅力は、『すべて、をりにつけつつ、一年ながら、をかし』(『枕草子』の一文で、「すべて、その時々に応じて、一年中にわたってみんな情趣があるものである」という現代語訳)。厳しい冬の寒さを耐え抜いたのちの美しい自然は格別だそう。

能勢町ふるさと納税のお礼品のご紹介

旧天王小学校と辻先生

大阪の最北端 能勢町天王で季節の農業・自然体験

季節の野菜(黒枝豆、マコモダケ、お米、ジャガイモ等)の植え付けと収穫体験です。 お土産として天王産のお野菜や農産品をお持ち帰りいただきます。(季節によりお野菜の種類は異なります。)
ふるさと返礼品詳細
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「のせむすび」は、能勢町で生活する人々の暮らし方や仕事ぶりなどを取材し、大阪のてっぺんから様々な情報を伝えるメディアです。
今まで知らなかった能勢の人やモノに出会い、新しい価値が広がり、この地に幸せな循環が生まれますように。

のせむすび

能勢町は大阪府の最北端(てっぺん)に位置する人口9500人の町です。美しい棚田や樹齢千年以上の大ケヤキ、浄瑠璃やだんじりなど、先人から受け継いできた自然環境や伝統文化が残っています。
大阪・京都・神戸から1時間程で行ける、都会から一番近い里山です。

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