始まりは、2019年。
大阪府が公民連携協定を結ぶアサヒビール株式会社様から、地域活性のための支援をいただくことになったのをきっかけに、ビールの主原料のひとつである「ホップ」と出会います。
ホップは涼しく、湿度が低い場所を好み、日本では北海道や東北地方での生産が盛ん。
『能勢町の爽やかな気候と標高200mが生み出す寒暖の差は、ホップの栽培にきっと適しているはず!』
新たな特産品の誕生を期待し、2020年4月、若手農家を中心とした能勢町ホップ栽培振興協議会が立ち上がり、能勢町産ホップ栽培への挑戦が始まりました。
とはいえ、これまで能勢町でホップを栽培してきた耕作履歴は一切なし。
能勢の気候や立地などの特徴を踏まえた「能勢町産ホップ」の生産体制を構築するため、ホップの先進地へ赴くなど知識やノウハウを蓄えます。
ホップは、とても生育旺盛なつる性の植物。
ぐんぐん伸びるつるをフェンスや支柱に誘引して育てるのが主流です。
協議会では、支柱を組み合わせたツリー状の仕立てに加え、畑の斜面を活かしてネットを張りめぐらせる仕立てを作るなど、今ある農地の有効活用を考えながら、さまざまな工夫を凝らした栽培方法を試験的に行いました。
能勢町に適した栽培方法を模索しつつ、ホップを使用した加工品を開発することになりました。
第一弾としてクラフトビールの製造に取り組み始めます。
能勢ならではの味を醸すための候補となったのが、能勢伝統の「銀寄栗」。
皇位継承重要祭祀『大嘗祭(だいじょうさい)』にも供納された、まさに能勢を代表する特産品です。
栗栽培が今なお盛んである一方、近年では栽培農家の高齢化や台風による倒木などから、荒れた栗園が増加。
生産量も徐々に減少している現状があります。
伝統を次世代に継承するため、大切に、丁寧に育てる自慢の銀寄栗を、クラフトビールとして、もっと多くの方に味わってもらい、銀寄栗に興味を持ってもらう。
これまでにない、全く新しい特産品の開発に、想いを共感する人々が集まり、伝統と新星を掛け合わせた「銀寄エール」となって実を結びました。
その名も「銀寄エール~能勢の里山物語~」伝統と新星が融合したクラフトビールです!
令和4年2月12日、大阪市北区にある中津ブルワリー様ご協力のもと、ついに初醸造。
銀寄栗のイメージに合う赤褐色な柔らい色味と、優しいほのかな香りが特徴の銀寄エールを飲めば、きっと能勢の里山を想い、ちょっと懐かしい気持ちになるはずです。(令和4年醸造分は、すべて完売しております。)
3月20日には、道の駅 能勢くりの郷で、ホップの植え付けイベントを開催。
「ホップってどんなん?」
「こんな風に育つんや!」
お子さんから大人まで、なかなか目にすることのないホップの苗にどきどきわくわくが止まりません!
ホップへの期待を込めて、思い思いの絵やワードをプランターに描き、小さな苗を植え付けます。
そして、出来上がった素敵なプランターは、この活動に賛同いただいた町内のレストランやお店に配布。
町内各地の店先で、ホップの栽培が始まります。
クラフトビールの製造や植え付けイベントは、能勢町産ホップのブランド化への第一歩。
能勢産ホップを育て、農地だけでなく、自宅や店先のグリーンカーテンとして暮らしに役立て、料理やビール、入浴剤、芳香剤などさまざまな方法で楽しむ。
生活に溶け込むようにホップが根付き、新たな産業としてヒトやモノ、コトを繋がることが目標です。
ホップの花言葉は『希望』。
銀寄栗に次ぐ、新たな能勢の『希望』となり、これまでにない『新しい循環』がまさに今、動き始めています。
能勢の新たな挑戦はまだまだ続きます。